肥満治療(自費診療)
Obesity Treatment
当院での導入背景・経緯

現在の制度では、肥満治療薬は
- 保険診療で治療できるのは、認定施設の病院に限られる(新潟市内は7病院)。
- 治療薬を開始する前に、一定期間の生活指導を伴う定期受診が必要。
当院から認定施設へ紹介受診された方がいる一方で、「仕事の都合がつきにくい」「病院への定期通院が難しい」などの理由から、紹介が難しい方がいるのも実情です。
これらの背景から、対象者へのアンケートなども参考に検討した結果、自費診療にはなりますが当院でも導入することにしました。
ただし、「適切な患者さんに適切な医療を提供したい」「リスクの高い方への治療は好ましくない」という考えから、「保険診療でも肥満治療を受けることができる方」に制限して行うことにします。
注意事項
- 当院には現在、管理栄養士がいないため、食事・運動療法などについて、認定施設レベルの指導・対応はできません。
- 万が一、重篤な副作用が起きた場合でも、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となりますので、あらかじめご了承ください。
- 混合診療が禁止されているため、肥満治療に伴う副作用に対する受診・処方も、全額自費での対応となります。
肥満症について

「肥満」と「肥満症」は違います
| 肥満 | BMI≧25 かつ 健康障害がなく、内臓脂肪の蓄積もない状態 |
|---|---|
| 肥満症 | BMI≧25 かつ 「後述の健康障害が1つ以上ある」または「内臓脂肪の蓄積がある」状態 |
肥満と違い、肥満症は治療が必要な「疾患」です。
※BMI(body mass index)の計算方法
例)身長170cm、体重90kgの場合 BMI=90÷1.70÷1.70=約31.1
肥満症そのものが生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群などの合併症のリスクを上げるため、健康寿命を縮める要因にもなっています。
肥満治療薬の対象となる方
- BMI≧35 + 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)のうち1つ以上の治療が必要な方
- BMI≧27 + 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)のいずれか1つ + 下記の健康障害のいずれか1つがある方
- BMI≧27 + 中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の方(※ゼップバウンドのみ可能)
健康障害の一覧(11項目)
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
- 肥満関連腎臓病
肥満は食べすぎだけが原因ではありません
肥満には、個人の努力だけでは解決できない次のような要因が含まれます。
- 遺伝的要因(少なくとも400種類以上)
- 生物学的要因(腸内細菌叢・消化管ホルモンなど)
- 環境的要因(ストレスなど)
- 社会的要因(車社会の発展、コンビニエンスストアの増加による運動量の低下、食事内容の変化など)
また、体の状態を一定に保とうとするため、減量しようとしても体が抵抗して減量が難しくなります。
日本人の20歳以上では、男性の31.7%、女性の21.0%が肥満に該当します。
肥満の割合は男性は40歳代(約35.8%)と50歳代(約38.3%)、女性は70歳以上(約22.8%)と50歳代(約21.2%)が最多です。
今や、肥満は国民病ともいえる状況です。
肥満治療について
肥満の治療は、主に次の3つです。
- 食事療法・運動療法・行動療法(定期的な体重測定などの意識づけ、行動の改善)
- 薬物治療(内服薬、注射薬)
- 外科的治療(スリーブ手術:胃を手術で細くする、など)
当院採用の肥満治療薬
(2種類の皮下注射薬):注射する場所はおなかや太ももで毎回変えます
-

セマグルチド(GLP-1受容体に作用する):
ウゴービMD(1本で4回分) -

チルゼパチド(GIP受容体/GLP-1受容体に作用):
ゼップバウンド(1本で1回分)
ウゴービMDとゼップバウンドの違いについて
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| 項目 | ウゴービMD | ゼップバウンド |
|---|---|---|
| 成分名 | セマグルチド | チルゼパチド |
| 作用する受容体 | GLP-1受容体 | GIP受容体/GLP-1受容体 |
| 投与回数 | 週1回投与(1本で4回分) | 週1回投与(1本で1回分) |
| 最大量 | 2.4mg/週1回 | 10〜15mg/週1回 |
ゼップバウンドは2つの受容体に作用するため、後述するように、減量効果はウゴービよりも大きい結果が出ています。
GLP-1とGIPはいずれも小腸から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる、食欲を抑える、胃の動きを抑える、といった効果があります。
薬剤が使えない方
- 薬剤に対して過敏症の既往がある方
- 膵炎の既往がある方
- 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病の方
- 重度の胃腸障害の方
- 妊娠中・妊娠希望・授乳中の方
- 甲状腺髄様癌、多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の家族歴がある方
副作用
初回導入時や薬剤量を増やしたときに出現しやすく、最初の3-4日間が多いですが、体が慣れるにつれておさまります。
症状が強い場合は、「継続の検討」「薬剤投与量の減量」「対症薬の処方」などで対応します。
主な副作用
- 消化器症状(吐き気25-30%、下痢18-20%、便秘10-17%、嘔吐5-12%、消化不良、食欲減退など)
※ほとんどが軽度~中等度です。 - 頭痛、だるさなど
稀な副作用
- 急性膵炎
- 胆石症、胆のう炎など
- 腎機能低下
- アナフィラキシー
効果について
セマグルチド(ウゴービ):最大量は2.4mg/週1回
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| 試験名(出典) | 比較 | 結果 |
|---|---|---|
| STEP 1試験 (N Engl J Med. 2021 Mar 18;384(11):989-1002.) |
ウゴービあり | 14.9%低下(15.3kg減量) |
| ウゴービなし | 2.4%低下(2.6kg減量) | |
| SELECT試験 (N Engl J Med. 2023 Dec 14;389(24):2221-2232.) |
MACE(心血管疾患による死亡、死には至らない程度の心筋梗塞・脳卒中)の発生率 | ウゴービを使用したほうが、12年間で20%減少 |
| 体重 | 9.6%減量 |
チルゼパチド(ゼップバウンド):最大量は10〜15mg/週1回
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| 試験名(出典) | 比較 | 結果 |
|---|---|---|
| SURMOUNT-1試験 (N Engl J Med. 2022 Jul 21;387(3):205-216.) |
チルゼパチド 5mg | 16.0%減量 |
| チルゼパチド 10mg | 21.4%減量 | |
| チルゼパチド 15mg | 22.5%減量 | |
| チルゼパチドなし | 2.5%減量 | |
| SURMOUNT-J試験(日本人のみが対象) (Lancet Diabetes Endocrinol. 2025 May;13(5):384-396.) |
チルゼパチド 10mg | 16.1%減量 |
| チルゼパチド 15mg | 21.1%減量 | |
| SURMOUNT-OSA試験 (N Engl J Med. 2025 Mar 6;392(10):958-971.) ※CPAPなし群の結果 |
チルゼパチド 10mg/15mg | 体重 -17.7% AHI -25.3(-50.7%) |
| チルゼパチドなし | 体重 -1.6% AHI -5.3(-3.0%) |
※SURMOUNT-OSA試験は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のある方を、「CPAPをしているか、していないか」と「チルゼパチドを使うか、使わないか」の4つのグループに分けて行われた試験です。上の表は、CPAPをしていないグループの結果です。
セマグルチドとチルゼパチドは、どちらが効くの?
SURMOUNT-5試験(N Engl J Med. 2025 Jul 3;393(1):26-36.)では、次の結果でした。
| チルゼパチド | 20.2%の減量 |
|---|---|
| セマグルチド | 13.7%の減量 |
その他にも、血圧低下、HbA1cの低下、LDL-Cの低下でも、チルゼパチドが上回る結果になっています。
当院での治療について

治療の流れ
- 肥満治療の適応を確認します(身体測定、基礎疾患など)。
※追加検査(血液検査、睡眠時無呼吸の有無など)を行うこともあります。 - 保険診療での治療を希望されるかを確認します。ご希望があれば、認定施設の病院へご紹介します。
- 当院での治療を希望された場合に導入します。治療薬の選択・投与量は、患者さんの背景や費用負担と相談して決めていきます。
対象となる方(保険適応と同様)
- BMI≧35 + 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)のうち1つ以上の治療が必要な方
- BMI≧27 + 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)のいずれか1つ + 前述の健康障害のいずれか1つがある方
- BMI≧27 + 中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の方(※ゼップバウンドのみ可能)
費用
診察料
| 初回診察 | 初診料として3,000円(税込) |
|---|---|
| 継続受診 | 再診料として1,100円(税込) |
治療薬
最大使用量までの料金を掲載していますが、実際の投与量は、患者さんの背景・目標、費用負担などを含めて相談して決めていきます。
※費用は全て税込です。
ウゴービMD(週1回投与、1本で4回分)
本体以外に、注射針もお渡しします。
| 投与量 | 4週分(1本分) |
|---|---|
| 0.25mg | 16,000円 |
| 0.5mg | 34,500円 |
| 1.0mg | 53,000円 |
| 1.7mg | 66,000円 |
| 2.4mg | 78,000円 |
ゼップバウンド(週1回投与、1本で1回分)
副作用などに心配がある場合は、1回分からの対応も可能です。
| 投与量 | 1週分(1本) | 4週分(4本) |
|---|---|---|
| 2.5mg | 7,500円 | 29,000円 |
| 5.0mg | 15,000円 | 58,000円 |
| 7.5mg | 21,000円 | 81,000円 |
| 10mg | 24,500円 | 94,000円 |
| 12.5mg | 28,500円 | 110,000円 |
| 15mg | 31,400円 | 120,000円 |
- 基本的には毎月の診療です(事情によって、2か月ごとで対応します)。
- 治療開始前に、必要に応じて血液検査などを行うことがあります。
- 治療中に、副作用などの有無を確認するための検査を行うことがあります。
薬剤の保管方法について
- 基本は冷蔵保存(2〜8℃)です。外箱に入れたまま、遮光して保存してください。
- 30℃以下での保管も可能ですが、最大で21日間です(添付文書参照)。
- 凍結した場合は使用しないでください。
薬剤の廃棄方法について
針があるものは「感染性廃棄物」として処分する必要があります。次回来院時に、使用済みのものをご持参ください。当院で廃棄いたします。
ウゴービ
本体に針は含まれませんので、本体は各自で廃棄できます。使用時に装着する針は、必ず当院へご持参ください。
ゼップバウンド
本体に針が収納されているため、使用後の本体をご持参ください。使用前にはずす灰色のプラスチックキャップは、各自で処分できます。
未承認医薬品等に関する情報
- 医薬品医療機器等法上の承認について
- 当院で自費診療として処方する「ウゴービ」「ゼップバウンド」は、保険適用の条件を満たさない場合、医薬品医療機器等法において肥満治療目的での承認を受けた用法・用量とは異なる適応外使用となります。
- 入手経路について
- 当院の医師の判断の下、国内の医薬品卸業者より適法に仕入れています。
- 国内の承認医薬品等の有無について
- 国内において肥満症の効能・効果で承認されている同一成分の医薬品(保険適用)は存在しますが、自費診療における適応は未承認となります。
- 諸外国における安全性等に係る情報について
- アメリカでは、ウゴービが2021年6月、ゼップバウンドが2023年11月に、BMI30以上の方、またはBMI27以上で体重に関連する病気がある方の体重管理薬として承認されています。
アメリカの添付文書では甲状腺C細胞腫瘍のリスクが警告されており、甲状腺髄様がんの病歴が本人または家族にある方などには使えません。
ヨーロッパでは2025年6月、セマグルチドのごくまれな副作用(1万人に1人まで)として、視力が落ちることのある目の病気を添付文書に加えるよう勧告されました。







